耳に残るは、

 例えばそれは、利き足を使わずにボールを蹴ること。でなけば、目を瞑って気配のするほうへ近づくこと。そんな風に己に枷を課すこと。

――始めはかったるいんだけど、だんだん繰り返してるうちに何かが鍛えられるような気がするんだよなあ。

 そんな風に話していたのは、確かティーダだった。仲間の中で一番年若い彼の戦い方は粗削りだが、その身のこなしは誰もが天賦の才を覚えるような、軽く、しなやかな美しさが宿っている。

 異世界の戦いから帰ってきてより後、フリオニールはこうして時々、彼らの話してたことを思い返す。仲間たちはもう訪ねてはいけない場所にそれぞれ帰っていったけれど、その言葉は確かに今も耳にこだましている。特に今夜のようなしん、とした風のない夜、月明かりが差し込むだけの薄暗い部屋で横たわりながら、時々そんな事を考える。

――みんな、今、どうしてるんだろう。

 それを知る術がおそらく永久に見つからないのはわかっているけれど、それでも蘇ってくるのだ。弾むような楽し気な声、静かな眼差し、時に自分をかばってくれた傷だらけの背中。特に時間を長く過ごすことが多かった、三人の仲間たちが、今も健やかであるように。空中に手を伸ばして、そんなことを誰ともなく、神に祈らずには居られなかった。