あずけた心の在りかは

「なあ、あの晩のこと、まだお前は覚えているのか」  長雨の続く季節のある夜、城下町に位置する親友の部屋でセシル・ハーヴィは、その言葉を聞き、驚きを隠せなかった。  まだ、幼さの残る少年だった頃、ただ自分の抱えていたその気…

ほんとうをあげる

 中空に輝く二つの月のどちらもが厚い雲にさえぎられ、光の届かない夏の晩、真夜中が近くなり、いよいよ柔らかな草花がそよぐ草原にぽつりぽつりと弱い雨が降り始めた。齢はやっと十五を数える様になったばかりのカインは、一つ年下の幼…